amenorsir’s blog

絵描き物書きベース弾き。

7月某日、七夕直前の金曜夜、私は残業をしていた(正式に言えば、転職した後輩の仕事を丸投げされた)。 営業室へは携帯持込禁止であったが、その時はなんとなく嫌な予感がし、私は作業を中断してロッカー室へ向かった。 母からのLINE。それは容態が悪化してい…

元旦

初日の出を見たことはない。正確には、11歳くらいの年に一度だけ早起きして見たことがある。 いつもの時間に目覚ましをかけたけれど、大晦日に神社に出かけて眠ったのが2時だったから二度寝してしまった。 のんびり起きておせちを食べ、友人からもらった年賀…

半休

帰りの電車はがらがらの午後13時30分。 このまま帰るのは物足りないから映画とか行こうかと調べるが、観に行くほどの気になる作品は上映されていなかった、あとお腹が空いている、食べ物も交互に調べなければ、そうこうするうちに普段の乗り換え駅を通り過ぎ…

海を渡る力

海を渡ってゆく力が欲しい。 中学2年の校外学習で江ノ島に出かけた日、夕暮れに稚児ヶ淵の崖から見た海にわたしは一目惚れした。 あれからふとしたタイミングで稚児ヶ淵に通っている。 この連休、わたしは最後にここへ訪れようとしていた。夕陽が沈んだら、…

7月のあたま

吉祥寺へ出かける日はいつも雨。 昨日もそうだった。 軽く絞れば水が滴りそうな湿った雲に覆われた街、ビニール傘を手に提げ、三ヶ月ぶりの美容院に向かった。 ロングの髪は好きなほうだけれど、いかんせん髪質が太くて硬い私は綺麗な黒髪を保つことができな…

父の日に

夕方16時の平日。仕事は今日も終わらない。 Instagramを見ていると、同じ年頃の友人らは海外旅行をしたり好きなタイミングで有給を取って遊んだりしている。ように見える。だけかも。 大体はパートナーとお洒落なレストランに出掛けたとか、テレワーク中に食…

S線

これは就活の頃、大学4年になる春のある日のできごと。 某企業の説明会の帰り、S線のホームでわたしは電車を待っていた。 会場の雰囲気の堅さに疲れてしまい、頭がボーっとしていた。 たしか平日ではなく、土曜の夕刻だった気がする。まだ空は明るかった。 …

化粧水

小学校のころ、水をモチーフにしたとあるキャラクターが人気だった。 毎週末に放送されるそのキャラクターのアニメを楽しみにしていたし、友達からそのシリーズものの漫画を借りたりしていた。 ある巻で、「やつはしにはニッキが使われている。ニッキは木。…

黒本

ジャズに関心があり、よく聴いている。 聴くだけでなくプレイヤーにという気持ちがあり、社会人ジャズサークルやバンドメンバー募集を見て何度か足を運んだ。 ある日、音楽掲示板で歌手絶賛募集というのでデモをつけて返信すると、伴奏一回5000円と返ってき…

「普通」を保つこと

「当たり前のことを当たり前にやれる人が一番すごい」 「スペシャルな存在を目指すより、普通を保っていることが何よりすごい」 なんていう言葉を巷でよく聞く。 多分就活を始めた頃からだと思う。 普通、当たり前って具体的に何だろうと考える。 職場で、社…

断捨離

この夏から大胆な断捨離を始めた。 物が無くなると新しい考えや刺激を受けることができ、自分に向き合えるという教えを以前SNSで見かけたのだが、本当だった。 それから、自分が本来何を好きなのか見えてくるというのも。 心がすっきりし、新しいことに挑戦…

鳳仙花

小学校のとき、植物を育てる授業があった。確か「生活」という科目だったような気がする。郊外のごく普通の公立小学校だったが、植物と歌を大切にするというスローガンを掲げており、毎年初夏になると5・6年生を除く児童がそれぞれの学年に割り振られた数…

たまご寿司

5月のとある休日の夕刻、父とふたりで、駅前にあるL字型カウンター席だけの小さな寿司屋に行った。家族行きつけの寿司屋だが、父とふたりきりで行くのはおよそ二年ぶりであった。偶然、母やきょうだいは各々の用事で不在だったのだ。 注文を終え、ふと見れば…